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遙かなる赤銅渓谷 ファイナル

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 海外のレースに出場すると、いろいろな国からやって来た選手や関係者と友だちになる。90年、91年と2年連続してミネソタの「ボーダー・トゥ・ボーダー」というレースに出場した時には、やはり2年連続出場していたオハイオから来たチームと、シカゴから来たチームのメンバーと仲良くなった。

 92年のレイドゴロワーズではアメリカチームのリーダー、マーク・バーネットと仲良くなり、レース後、オマーンからエジプトに向かう機内で、いろいろなことを話合った。その後、彼が住むロスでも2度ほど会ったが、彼があんなにも有名人になるとは、その時はまったく想像できなかった。

 今回でも多くの人と交流が出来た。

 オーストラリアからやって来たテレンス、イタリア系オーストラリア人夫婦、ルカとリディア。今回のレースの後、フェニックス経由でセドナとグランドキャニオンに行くことを予定しているが、テレンスとルカ、それにリディアの3人も日程の多少のずれこそあれ、ほぼ同じコースの旅をするのだとか。パットもお気に入りの野球チームのキャンプを見学の為に、フェニックスに行くと言っていた。


         手前から「二重人格」、ジム、リディア、ルカ、テレンス

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 あーそう言えば、コロラドから来た二人組、ジムと二重人格に付いて、何故、そのアダ名を付けたか、話していなかった。

 なにしろこの二人は変わり者で、単独行動することが多い。それに二重人格は酒を呑まないシラフの時には無口でほとんど会話することがないのだが、ビールを一口飲んだ途端に雄弁になり、果ては叫び始める。それで二重人格というアダ名が付いた訳だが、ディエゴにもうひとつ、別のアダ名が付けられていた。それは「フロッグ」。ビールを呑んで、ゲップばかりしていたかららしい。笑える。

 メキシコからの帰路、エルパソまでのバスが一緒だった、サンディエゴからやって来たロブとも仲良くなった。ロブはディエゴとは古くからの友人で、今回もレースの取材の傍ら(本業はカメラマン兼ツアーガイドとか)、ディエゴの即席レストランを手伝っていた。英語とスペイン語の両方に堪能なので、今回みたいな旅では重宝されているらしい。

 そのロブにボクは質門した。

 「レースの最中にアニモとかバモスとか、ミンナが叫ぶ意味はよく分かったけど、時々、ヤメロ! と声を掛けてくる人が居たんだけど、あれはどういう意味なの?」

 「ヤメロは、もうすぐ、という意味だよ。もうすぐゴールとか、もうすぐ次のチェックポイントだとか」

 「はあ・・・なるほど」とボクは頷いた。そして苦笑しながらロブに教えた。

 「実は日本語でヤメロと言えば、ストップという意味だよ」

  ロブが目を見開いて「Interesting!」と言って、すぐにメモを取った。

       サンディエゴから来たロブはナイスガイ。米滞在中に滞在先のホテルにギフトを贈ってくれた

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 アメリカ国境まであと30分くらいのところで、バンのマフラーが落下して、すぐ近くにあった牧場の柵の有刺鉄線で応急処置。アメリカのイミグレーションでは全員のパスポートをチェックされた挙句、バンのルーフに積んである荷物を降ろしてバッグの中身を些細に調べられる始末。そりゃそうだよな~...いろいろな国籍の人間が乗っているんだもん。それに皆、決して上品な格好とは言えないし・・・

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 それでもなんとか無事に国境を超えて、エルパソ空港の近くのレストランで最後の晩餐を取ろうということになった。

 ユカはそのまま日本に帰り、弘樹はメキシコシティで高地トレーニングの後、カリフォルニアのベンチュラで開催される100キロのレースに出場する。ボクとカホはアリゾナを巡り、オーストラリアから来た3人もアリゾナだ。コロラド二人組はニューメキシコ経由でコロラドに戻り、ロブはサンディエゴに帰る。

 食べて、飲んで、語って、笑って、ハグして、それぞれが次の目的地へと向かう。10日前に、ユカとカホとの3人でこのエルパソの夜の空港に降り立ち、些か、心もとない寂しさを感じたが、今はその時にはまったく知らなかった友たちとの別れによって、もっと大きな寂しさを感じている。

 旅は続く。新たなチャレンジも続く。それは生きている限り。いやその為に生きているのだ。

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    木村東吉
    1958 年大阪生まれ。
    20代は雑誌「ポパイ」の顔としてファッションモデルとして活躍したが、その後、30 代に入りアウトドア関連の著作を多数執筆。
    現在は河口湖に拠点を置き、執筆、取材、キャンプ教室の指導、講演など、幅広く活動している。
    また各企業の広告などにも数多く出演しており、そのアドバイザーも務めている。

    詳しいプロフィールはこちら

    木村東吉公式サイト「グレートアウトドア」

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