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走るだけではモッタイない!

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 ここ数年、だいたいハーフマラソンは1時間35分前後で走っている。今回の「佐渡、トキマラソン」でも1時間36分だった。
 河口湖の自宅から、富士急、中央線、新幹線、ジェットフォイルと乗り継ぎ、約5時間かけて佐渡島にやってきて、たった1時間半ほど走って帰るのはあまりにもモッタイない。せっかくなのでマラソンの後、中野洸氏のご息女である奈美子さんに島内を案内してもらった。
IMGP3267.JPG 佐渡と言えばトキ。今回のマラソンレースのタイトルにもなっているが、乱獲や水田への農薬使用の影響などで、一時期は絶滅の恐れもあった。が、昭和初期に「佐渡には自然のトキがまだ生息している」と知られるようになり、その後、昭和27年に特別天然記念物として指定。昭和60年から中国と共同で人工的に繁殖させ、その数を少しづつ増やしている。
IMGP3251.JPG 放鳥されたトキが空飛ぶ姿を、実際にこの目で見たかったが、頻繁に現れると言われている奈美子さんお薦めの場所に行って待ったが、その日は残念ながら現れてくれなかった。で、仕方なく「トキ保護センター」へ。
 トキは非繁殖期(8月から1月)には、いわゆる「朱鷺色」と言われる薄いサーモン・ピンクのようななんとも言えない艶やかな翼を広げるが、繁殖期には首から黒い皮膚脱落物を分泌させ、それを自らの身体に塗り広げ、頭部や首、それに背中の一部を黒灰色に染める。外敵から身を護るための保護色の役割を果たしていると思われるが、保護センターにもそのような色をしたトキが数羽居た。他にも北アフリカ原産のホオアカトキや、東アジア原産の黒トキも数羽居たが、やはり「ニッポニア・ニッポン」、我が国のトキがもっとも美しい。
IMGP3304.JPG 「トキ保護センター」の後は、佐渡でもっともボクのお気に入りのスポット「宿根木」に連れて行ってもらった。8年前にここを初めて訪れた時から、その情緒あふれる風情に魅せられ、再びそこを訪れることを楽しみにしていた。
IMGP3293.JPG
 「宿根木」とは佐渡南部、小木港の近くにあり、かつて廻船業を営む者が居住して栄えた小さな地区で、今では重要伝統的建造物群保存地区(ヒエー! 長いタイトル)に指定されている。当時の船大工たちがその高い技術で建造した建物が110棟残っており、今でも実際にそこで生活が営まれている。
IMGP3294.JPG このような古い町の路地裏を歩いていると、不思議とヨーロッパの中世の町を歩いているような錯覚を覚える。イタリアのトスカーナ地方、ルッカやシエナ、あるいはスイス南部ルガーノ湖の湖畔、モルコーテの村...それは場所への旅ではなく、時間への旅だと思い知る。
 流人、金山、廻船業。それらの歴史が佐渡を古くから豊かに、文化的に形成し、現在にもそれを連綿と伝えている。
 マラソンで急いで走り抜けるだけではホントにモッタイない。あまりにも見るべきものが多いのである。
IMGP3282.JPG
 
 

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    木村東吉
    1958 年大阪生まれ。
    20代は雑誌「ポパイ」の顔としてファッションモデルとして活躍したが、その後、30 代に入りアウトドア関連の著作を多数執筆。
    現在は河口湖に拠点を置き、執筆、取材、キャンプ教室の指導、講演など、幅広く活動している。
    また各企業の広告などにも数多く出演しており、そのアドバイザーも務めている。

    詳しいプロフィールはこちら

    木村東吉公式サイト「グレートアウトドア」

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